おみくじで、「抱人・抱え人」という項目を目にしたことはありませんか?
現代では、なかなか耳にしない言葉ですが、
「抱人・抱え人」というのは使用人や雇い人のことを言います。
寺社によっては「求人」「人雇」「雇人」と書いてあるところもあり、現在いる社員や部下に対して、もしくは社員募集・新しい部下を決めたいとき、決めるにあたっての心構え・こんな人が良いのではないか・こんな風に募集してはどうか?などが書いてあるようです。
主婦である私には、特に必要な項目ではなかったので、これまではサッと目を通すだけの部分だったのですが、この記事を書くにあたって、これまで引いたおみくじの記録を見返してみました。
では、実際に「抱人・抱え人」にはどんな文言が書かれていて、それはどのような意味なのか、またどこで引くことができるのかなど、詳しくご紹介したいと思います。
【おみくじで「抱人・抱え人」について】
おみくじに書かれている「抱人・抱え人」の読み方と意味
「抱人・抱え人」は『かかえびと』と読み、使用人や雇い人という意味の言葉です。
「抱人・抱え人」に書かれている言葉の意味
おみくじは、書かれている内容が大切と言われているものの、現代人には難しい文言もたくさんありますよね。
比較的「抱人・抱え人」の項目に書かれている言葉は、わかりやすいものが多いので、解釈しやすいのですが、「これってどういうこと?」「こういう意味で合っている??」と迷ってしまいそうな言葉の意味をいくつかご紹介します。
よろし
良いという意味。おみくじに、「その人にてよろし」と書かれている場合には、「その人が良いでしょう」という解釈になります。
おそし
遅いという意味。「来るともおそし」と書かれていたら、「良い人が現れるが、少し時間がかかる」ということです。
人の世話
人が世話してくれるという意味。「人の世話あり」で、「誰かが紹介してくれる」と解釈することができます。
良き人
良い人という意味。「よき人あり」と書かれていた場合は、「良い人がいるでしょう」という解釈になります。
時を待て
時を待てとは、焦らずに様子をみて「時期を見計らいましょう!」うという意味です。
心して
時代劇などによく使われますね。事を仕損じないように「十分に注意し慎重に責任感を持って!」ということです。
さわり
さわりとは、都合が悪い、支障があるというときに使います。現代でも「差し障り」というふうに使いますね。
妨げ
妨げは、「じゃま」「妨害」「阻害」などの意味です。
みあわす
見合わすとは中断、中止する。など、取りやめるという意味です。現代でも電車が運休するときによく使いますね。
おみくじの起源は平安時代と言われていますが、現在のような紙のおみくじが作られたのは江戸時代の頃。当時は、使用人や奉公人などがいる家も多かったので、おみくじにもこのような項目が作られたようです。
現代に置き換えると、会社を経営する立場の社長さんであれば社員やスタッフ、管理職など会社の上のほうの立場の人であれば、部下について書かれている項目と解釈できます。
これから誰かを雇おうか迷っていたり、既に求人情報を出していたりする時に、参考にしたい項目なんですよ。
その他、「おみくじ」の、いろんな意味はこのページへ
おみくじを引ける場所と書かれている内容
「抱人・抱え人」の項目があるおみくじは、諏訪大社や大神神社などで引くことができます。
【諏訪大社】
諏訪大社は、長野県の諏訪湖周辺に境内が4つある神社です。国内にある神社で、最も古い物の一つと言われているんですよ。
ここで初めて引いたおみくじの「抱人」の項目には、「人を変えぬがよし」と書いてありました。これは『新しい人を雇わない方が良い』という解釈もできますが、『迷わずに今良いと思っている人を選びなさい』という意味で捉えることもできます。おみくじを引いた時の状況に合わせて解釈すると良いかもしれませんね。
別の日に引いたおみくじには、それぞれ以下のような文言が書かれていましたよ。
- 女ならば支障なし(女性なら支障はないでしょう)
- 思うような人はなし(思っているような人は現れません)
- 油断すれば損あり(油断していると損をする可能性があります)
- 年長者がよろし(年長者のほうが良い)
- 良き人西にいる(西の方に良い人がいます)
- 他人に頼むがよし(誰かに紹介してもらうのが良いでしょう)
【大神神社】
奈良県桜井市にある大神(おおみわ)神社。こちらも諏訪大社同様、日本で最も古い神社の一つと言われる歴史のある神社です。
こちらで引いたおみくじには「信じてよろし」とありました。これも『相手を信じて良い』と『自分の勘を信じて良い』の二つの意味を持っていそうですよね。
大神神社も、何度か訪れているので、他の文言もご紹介します。
- じっくり探せ(じっくり探しなさい)
- 早いがよい(早いうちに決めたほうが良い/先に来た人が良い)
- 人を疑うな(人を疑ってはいけません)
- 頼み甲斐ある人来る(頼み甲斐がある人が来てくれます)
どちらの文言を見ても、内容がとても具体的ですよね。迷った時には、このようなおみくじのお告げを参考にすれば、良い人を採用できるかもしれません。
東京都の大國魂神社や岐阜県の伊奈波神社のように、「抱人・抱え人」ではなく、項目の名称を「求人」としているところもあります。
その他代表的な神社仏閣のおみくじに書かれているお言葉
良い人が来ますよ。その人でいいですよ。
- その人がよし:あなたが選びたいと思っている人・今いる人が良いです
- 充分ならねど吉:あなたが考える条件に100%合う人ではないかもしれませんが良い人です
- 先方が乗り気で来る:応募者がやる気満々で来ます
- 良き人来たる:あなたにとって、会社にとって良い人が来ます
- 思いがけぬときに来る:応募者は予想外のタイミングで来ます
こんな心構えで選びましょう
- 良く見定めぬと凶:・現社員のこと・応募者のことをよく調べないと良くないことが起こります。
- 心して選べ:十分に注意をして選んでください
- すこし時を待て:募集・選考、もしくは現社員に対して何かをすることを少し待ってください。
- 餘り(あまり)急ぐべからず:募集・選考、もしくは今いる社員に対して何かをするなら急がずゆっくり行ってください。
こんな人がいいですよ
- 縁者(しりあい)が吉:募集をするならあなたの、もしくは同僚の知り合いの人に来てもらうと良いです。現社員ならもともと知り合いである方が幸運をもたらします。
- 女ならば吉:女性の現社員・募集中なら女性が幸運をもたらします。
- 男ならば吉:男性の現社員・募集中なら男性が幸運をもたらします
- 良き人西にいる:あなた・会社にとって良い人が西の方向にいます。
こんな風にしてみてはどうでしょう
- 人をかへてみよ:新しい社員として考えている人、もしくは現社員を変えた方が良いです
- 得がたし人に頼め:新しい社員の選考には優秀な人、もしくは新しい社員には優秀な人にお願いしましょう
- 新たに人を求めよ:新しく社員・部下を募集しましょう
- 自分で探すべし:新しい社員・部下は他人に頼まず自分で探しましょう
あまり良くありません
- さわりあり:何か都合の悪いこと・支障があります
- 妨げ(さまたげ)ありて来ぬ:何かじゃまや妨害があるために応募者が来ません
- みあわすがよろし:社員募集、もしくは現社員に何かをすることをやめた方が良いです
- 思う様な人はなし:応募者・現社員であなたが望むような人はいません
抱人(抱え人)と間違えやすい「待ち人(待人)」
おみくじには待ち人、もしくは待人(まちびと・ひとをまつ)というのもあります。これは、あなたが待ち望んでいる人のことです。
具体的には片思いの相手・未来の恋人や結婚相手・人生のキーパーソンとなる人物です。「抱人」と字が1文字ちがいで似ていますが、意味は異なるので注意してくださいね。
◎ 待ち人についてはこちらで詳しく解説しています。
まとめ
「抱」という字の成り立ちは「扌(手)」と「包」に分かれています。「扌」は五本指のある掌から成り立っています。
「包」は手をのばしてお腹の胎児をかかえ込んでいるところから成り立ちました。「己」の部分が胎児の象形です。ですから「抱」はまだ見ぬ愛しいわが子をお腹の上から抱える愛しさのあらわれなのです。
「抱人」の意味である使用人・社員・部下という字だけみると、きっちりと線引きされた上下関係をなんとなく感じますが、お腹の我が子を抱くような気持ちで社員や部下のことを考えたらセクハラ、パワハラ、モラハラという心が痛むような言葉はなくなるのかもしれませんね。
おみくじをそんな優しい気持ちでひいてみてください。人の上に立つことは非常に難しいことですが、そういう気持ちがある人の周りは、良い社員や部下が集まっていたり素敵な人にも巡りあえる気がします。