最近ニュースなどで、現在の天皇陛下が退位されたことに伴って「恩赦の実施を検討している」という話を耳にします。
「恩赦(おんしゃ)」「大赦(たいしゃ・だいしゃ)」や「特赦(とくしゃ)」などという言葉は、日常生活ではほぼ無関係な言葉ですが
これらが何を意味しているのか、やんわりと分かるような気がするものの、実際詳しくはわかりませんよね?
私の法律の知識は、仕事上関係する法律、あるいは道路交通法くらいしか知識がなく、今回良い機会なので調べてみました。言葉の意味を深く理解することで、さらにそれらのニュースの内容がわかるようになるかと思います。
恩赦、大赦、特赦の違い、また、なぜその制度があるのか?
それらの歴史などを紐解いてみましょう!
恩赦、大赦、特赦の意味と違い
■恩赦
恩赦とは、「恩赦法」という法律のもと定められています。
有罪判決を受け、服役している人などの罪を軽くしたり、無罪にしたり、資格停止などの措置を解除してあげることです。
簡単に言うと、国の行事に伴って罪を帳消し、あるいは軽くしてあげる!というもの。
恩赦には方式の違いから二つに区分されます。
- 政令恩赦
- 個別恩赦
政令恩赦
政令恩赦は、政令で罪や刑の種類、基準日などを一律に定めます。
政令恩赦は3つに区分されています。
- 大赦
- 一般減刑
- 一般復権
個別恩赦
個別恩赦は、個人の申し出により中央更生保護審査会が審査して決められるものです。
個別恩赦は4つに区分されています。
- 特赦
- 刑の執行免除
- 特別減刑
- 特別復権
これらを総称して恩赦と言ってるんですね。
■大赦とは
政令によって、「罪の種類」を定めて行うもののことを言います。
- 有罪判決を受けた人に対して、判決の効力を失わせることができます。
- 有罪判決をまだ受けてない人に対しては公訴権を消滅させることができます。
つまり、罪に問われた人に対して罪を免除する、ということを言います。
※大赦は政令恩赦 その決定は内閣の専断事項になっています。
■特赦とは
有罪の判決を受けた「人」に対して、その有罪判決の効力を失わせるというもの。
中央更生保護審査会の申し出があった特定の人に対して行われます。
※特赦は個別恩赦
■大赦・特赦 以外の恩赦
また、大赦・特赦のほかに、減刑・刑の執行免除・復権などがあります。
減刑とは、その名のとおり罪を軽くすること。
刑の執行免除とは、有罪判決で確定した刑を免除されること。
復権とは、有罪になったことで資格を喪失したり停止された人に、その資格を回復させることです。
つまり、有罪を受けた人に対して、無罪にしたり刑を軽くしたりする制度です。
なぜこんな制度があるの?
では、なぜこんな制度があるのか?
元々恩赦とは王様や君主の権限でした。
「王様が結婚した」、とか「亡くなった」とかそういう時に、慈悲で行われるものだったようです。
日本では「生類憐みの令」の法を無くすときに「今まですみませんでした」という意味で行われたこともあるとか。
つまり、王様などの慈悲心や国民に対しての謝罪の意味を込めたりした「特別な赦し(ゆるし)」ということです。
恩赦の思考は、古くは大化の改新前後に唐から伝来したとされ、時の天皇の専権事項として存在していたという歴史があります。
その後、江戸時代には恩赦は「赦宥(しゃゆう)」として、具体的な内容や手続きについては公事方御定書下巻で定められていたそう。
昔から重罪を犯した罪人には適用の例は少なかったようですが、奈良時代から平安時代にかけて儒教の徳治主義や仏教の放生による善行の推奨により、死罪の停止や重罪人が大赦を受け釈放されるという事態も頻発したという時代もありました。
現在の日本では恩赦は慎重に行われるよう決められており、どういう場合にその力が発動するかも定められています。
- 誤審の救済のため、法律では救済できない場合は恩赦で救済したり
- 社会の変化で有罪が妥当ではないと定められた場合。
- 受刑者が「改心しているな」と判断された場合などです。
模範囚だった受刑者が懲役を終える前に出所する「仮釈放」とは違い、即服役終了になるそう。
「誰から見ても、減刑や無罪が妥当」と納得できる場合に恩赦が行われるのですね。
近年の恩赦の実施
また、日本でどのくらい恩赦が行われたのかというと
昭和27年から最近では平成5年まで9回もの恩赦が行われています。
知りませんでした…!
- 昭和27年 平和条約の発効
- 昭和27年 皇太子殿下(明仁親王)立太子礼
- 昭和31年 国際連合加盟
- 昭和34年 明仁親王のご成婚
- 昭和43年 明示百年記念
- 昭和47年 沖縄復帰
- 平成元年 昭和天皇御大喪
- 平成2年 今上天皇ご即位
- 平成5年 徳仁親王のご成婚
まさに天皇家の慶弔時や国家的な記念の時に行われてきました。
一番最近の恩赦は公職選挙法違反の恩赦がほとんどだったようです。
ちなみに、海外でも「恩赦」の制度はありますが、君主の専権事項になっていることが多く、日本のように王室のない国家では、内閣や大統領の権限により恩赦が行われるようです。
フランスでは、恩赦を使いすぎて廃止になった歴史があるそうです。
何でもほどほどでないといけませんね…。
誰が得するの?
それでは、その「恩赦」によって誰が得をするのか?
過去の例を見てみても、凶悪な犯罪を犯した人が恩赦をうけたことはないようですね。
一応世間を気にして、交通違反や選挙法違反などの軽微なものに対して行われるのがほとんど。
まれなことでしょうが、共犯で死刑判決が出た人が無期懲役に減刑されたことはあるようです。
先ほども出ましたが、選挙法違反を犯した人が大半をしめるそうで、得をするとしたら、そういった人たちでしょう。
重大な犯罪者への恩恵は皆無と言っていいようです。
いくら国家行事等で国からお慈悲を受けるといっても、そのせいで国民を危険にさらすわけにはいかないですからね
そのあたりはちゃんと考えて行われているのですね。
まとめ
いかがだったでしょうか。
今回は天皇陛下の退位を機に恩赦が行われる可能性があると報道され、世間では賛否両論あるようです。
何のために犯罪者を捕まえるのか?
何のために服役し、罪を償うのか?の、意味をもう一度考えて欲しいです。
とはいえ、冤罪で服役したり死刑になったりする人も少なからず存在すると思います。
そういった人々を救うための措置であれば、恩赦も必要なのだとは思います。
このたび行われるかもしれない「恩赦」について、正しい知識と認識を持って、興味深くことの成り行きを見つめていくと良いかもしれません。