30年慣れ親しんだ元号の「平成」の時代も、あっという間に終わり、2019年の5月からは新しい「令和」の時代が始まりました。
私には、幼い子供(娘)がいます。
娘がこれから生きていく社会にどんなことが起きるのかは母親として気になります。
恩赦で死刑囚や凶悪犯が社会に出てくるの?
そうなったら子どもたちに危険が及ぶのでは?
心配になり、素人なりに調べてみました。
結論:
たとえ恩赦があったとしても、死刑囚や、凶悪犯が一般社会に出てくるようなことはない
ということがわかりました。
理由は2つです。
- 恩赦は軽犯罪に適応される。
- 改善更生した罪人だけが受けられる。
詳しくは、本文でご説明しますね。
恩赦で、死刑囚や凶悪犯が減刑されるのか
冒頭でも述べましたとおり、恩赦で死刑囚や凶悪犯が減刑されることはありません。では、恩赦の対象はどんな人たちなのでしょう?
恩赦を受ける可能性のある人
死刑囚や無期懲役囚には適応されません!
それは、被害者感情に配慮しているからです。
「凶悪犯罪を犯した者が、国の慶事によってその刑が減刑される。」ということは、被害者やその家族には到底受け入れられるものではないからです。
政令恩赦が死刑囚に適応されたのは、昭和27年が最後です。この時に10数名の死刑囚が無期懲役に減刑されました。それ以降は死刑囚が政令恩赦を受けたことはありません。
※政令恩赦:
「政令恩赦」とは、新しい天皇陛下が即位される時や、皇太子様のご成婚の時などに行われます。よって年号が変わる時も恩赦が行われる可能性があります。
では、どんな人が恩赦をうけるのかというと、
選挙法違反や交通法違反などの軽犯罪者に対して行われます。
そして、恩赦が行われるのはどのような時なのか?
恩赦が行われるのはいつ?
恩赦には、施行区分により2種類あります。
- 政令恩赦
- 個別恩赦
施行時期としては、政令恩赦は、国の慶事に合わせて行われ、個別恩赦は、事情により、個人が申し出て中央更生保護審査会が審査して決められます。
恩赦が行われる理由
恩赦は、「恩赦法」という法律で定められています。
法務省保護局では次のように示しています。
『裁判で有罪の言渡しを受けた人たちが、その後深く自らの過ちを悔い、行状を改め、再犯のおそれがなくなったと認められる状態になった場合などには、被害者や社会の感情も十分に考慮した上で、残りの刑の執行を免除したり、有罪裁判に伴って制限された資格を回復させたりということが行われます。
このように恩赦は、有罪の言渡しを受けた人々にとって更生の励みとなるもので、再犯抑止の効果も期待でき、犯罪のない安全な社会を維持するために重要な役割を果たしているといえます。』
(法務省の公式ホームページより引用 なぜ恩赦は必要なのですか?)
このように、過ちを十分に反省して更生した罪人に対してのみ、それならばもう一度チャンスをあげましょう。というのが恩赦なんですね。
具体的には、内閣がその権限を持っており、憲法第73条によって内閣で審議・決定された後、それを天皇が認めると実施されます。
恩赦には、きちんと更生した罪人にもう一度チャンスを与える。ということ以外にも2つの意義があります。
更生のチャンス以外の意義
恩赦には、更生のチャンス以外にも意義があります。
それは
- 冤罪者を助ける
- 社会の変化に対応する
冤罪者を助ける
犯罪を犯していないのに、そのまま刑が執行されてしまった人に対して行われます。
一度確定した刑を変えることはできないので、恩赦で刑を失効させるということです。
社会の変化に対応する
刑が執行された後に法律が変わり、その判決が見直されることがあります。
治安維持法や国家総動員法などで恩赦が適応された事例が数多くあります。
恩赦、大赦、特赦とは?
恩赦には5種類あります。
- 大赦
- 特赦
- 減刑
- 刑の失効の免除
- 復権
大赦
大赦は、犯した罪に対して行われます。
罪に問われた人に対して、その罪を免除するものです。有罪判決の効力を失効させたり、まだ判決を受けていない人の公訴権を消滅させたりするものです。
※公訴権:検察官が公訴して裁判を求めること。
特赦
特赦は、有罪判決を受けた人に対して行われます。
中央更生保護審査会から申し出があった特定の人に対して、有罪判決の効力を失効させます。
減刑
減刑は、確定している刑を軽くすることです。
刑の執行免除
刑の執行の免除は、有罪判決が確定している刑に、その執行を免除するのものです。
復権
復権は、有罪判決を受けたことによって失われた資格に対して行われます。
例えば、選挙違反によって停止になった公民権を回復させるようなものです。
恩赦、大赦、特赦についてはこちらで詳しく説明しています。
戦後の恩赦の例、恩赦を期待した例
恩赦の例
- 昭和22年11月、終戦と日本国憲法公布:4750人
- 昭和27年4月、サンフランシスコ平和条約発効:100万6628人
- 昭和27年11月、皇太子殿下(今上天皇)立太子礼:3478人
- 昭和31年12月、国際連合加盟:7万1782人
- 昭和34年4月、皇太子殿下(今上天皇)ご成婚:4万8738人
- 昭和43年11月、明治100年記念:15万2818人
- 昭和47年5月、沖縄本土復帰:3万4503人
- 平成元年2月、昭和天皇ご大喪:約1017万人
- 平成2年11月、今上天皇ご即位:約250万人
- 平成5年6月、皇太子殿下ご成婚:1277人
長い日本の歴史の中では恩赦は何度も行われ、たくさんの人が受けてきたのですね。
また、こんな出来事もありました。
恩赦を期待した例
昭和59年に起きた、「夕張保険金殺人事件」です。
事件の概要は、北海道夕張市で炭坑下請け会社の「日高興業所」の作業員宿舎が火事になり、6人の焼死体が見つかりました。
その後、この火災でケガをした作業員の石川清による供述で、暴力団組長の日高安政と妻の信子の指示で自らが放火したことがわかります。
この夫妻の犯行の目的は、火災保険と従業員にかけていた生命保険でした。合わせて1億3800万円を手に入れましたが、その後日高夫妻は逮捕され死刑判決が下されます。
第4回控訴審の後、日高夫妻は控訴を取り下げました。
なぜなのか?
その理由は、昭和天皇が危篤だったからです。
天皇崩御により行われる大喪や、新天皇即位に伴う恩赦の対象になるのではないか?と考えたからでした。
しかし、死刑囚は恩赦の対象にはならないため、確定した死刑がそのまま執行されました。
まとめ
こうしてみていくと、恩赦はこれからも行われていくことと思います。
ですが、凶悪な犯罪者がその刑を免除されて刑務所から出てくるということはないようです。
それは、しかるべき理由があって、もう一度社会で活躍できることが十分に見込まれた人のみが恩赦を受けることができるからですね。
ですから恩赦があっても、私たちの社会生活の安全はそれまでと何も変わりませんし、子供たちが暮らしていくこれからの世の中も、法律でしっかりと守られているのですね。
自ら調べることで安心することができました。(笑)